フェノキシエタノール

はじめに:「フェノキシエタノール」って、何となく避けてる成分?

フェノキシエタノールって、よく聞くけど、なんだか肌に悪そうなイメージ…」「『フリー処方』って書いてあると安心するけど、なんで入ってる製品があるの?」

化粧品の成分表示を見ていると、多くの製品に「フェノキシエタノール」という名前が記載されていることに気づくかもしれません。同時に、「フェノキシエタノールフリー」という表示を見る機会も増え、「もしかして、肌に良くない成分なの?」と不安に感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

インターネット上には、フェノキシエタノールに関する様々な情報が溢れていますが、中には誤解を招くような情報も少なくありません。

今回、シャンプー・化粧品成分の専門家である私が、そんな「フェノキシエタノール」の本当の姿と、それがなぜ多くの化粧品に配合されているのか、そしてその安全性について、徹底的に解説します。

フェノキシエタノールって、具体的にどんな役割があるの?」「本当に肌に刺激があるの?」「どんな製品に配合されているの?」といった疑問にもお答えしながら、この成分の重要性、そして安心して化粧品を選ぶための正しい知識まで、分かりやすく、そして楽しくお伝えしていきます。フェノキシエタノールの真実を余すことなく解説しますので、ぜひ最後までお付き合いください!

そもそも「フェノキシエタノール」って何?—化粧品を守る「影の立役者」

まず、「フェノキシエタノール」が何者なのか、その正体から迫りましょう。

フェノキシエタノール(Phenoxyethanol)」は、化粧品や医薬品、日用品などに広く使用されている**「防腐剤」**の一種です。無色透明で、かすかに甘い香りがする液体で、水にも油にも溶けやすいという特性を持っています。

なぜ「防腐剤」が必要なの?—化粧品を「腐らせない」ために!

「防腐剤って、なんとなく化学的なものが嫌だな…」と感じるかもしれません。しかし、化粧品にとって防腐剤は、食品でいうところの「保存料」と同じくらい、非常に重要な役割を担っています。

考えてみてください。化粧水や乳液、シャンプーなどは、一度開封したら、使うたびに空気に触れ、手で触れることもありますよね。また、お風呂場など湿度の高い場所に置かれることも多いです。

このような環境では、化粧品の中に細菌(バクテリア)、カビ、酵母といった微生物が入り込み、繁殖してしまう可能性があります。微生物が繁殖すると、以下のような問題が起こります。

  • 製品の品質劣化: 分離したり、変色したり、異臭を放ったり、本来のテクスチャーが失われたりします。
  • 肌トラブルの原因: 微生物で汚染された化粧品を使うと、肌荒れ、ニキビ、炎症などの肌トラブルを引き起こす可能性があります。特に、デリケートな目元に使う製品(アイクリーム、マスカラなど)では、眼病のリスクも高まります。

防腐剤は、これらの微生物の繁殖を抑え、製品の品質を安定させ、消費者が安全に使い続けられる状態を保つために不可欠な成分なのです。「肌に直接使うものだからこそ、安全な状態を保つ」という目的のために、防腐剤は「なくてはならない」影の立役者と言えます。

フェノキシエタノールが選ばれる理由

数ある防腐剤の中で、なぜフェノキシエタノールがこれほど広く使われているのでしょうか?

  • 幅広い抗菌スペクトル: 細菌、カビ、酵母など、様々な種類の微生物に対して効果を発揮します。
  • 安定性が高い: 温度やpHの変化に強く、化粧品の中でその効果を安定して発揮します。
  • 他の成分との相性が良い: 他の化粧品成分と反応しにくく、処方設計がしやすいという利点があります。
  • 安全性と低刺激性: 後述しますが、他の強力な防腐剤と比較して、比較的刺激性が低いとされています。
  • 少量で効果を発揮: 低濃度でも十分な防腐効果が期待できるため、必要以上の量を配合する必要がありません。

これらの特性から、フェノキシエタノールは、化粧品の安全性と品質を保つために、非常にバランスの取れた防腐剤として、世界中で広く採用されています。

「フェノキシエタノール」は危険な成分?—誤解を解く!専門家がズバリ解説!

フェノキシエタノールは危ない」「アレルギーを引き起こしやすい」といった情報を見かけることがありますが、本当にそうなのでしょうか?

結論から言うと、通常の化粧品に配合されている濃度であれば、フェノキシエタノールの安全性は非常に高く、危険な成分ではありません

日本における規制と安全性評価

日本国内では、厚生労働省が「化粧品基準」を定めており、配合できる成分の種類や配合量には厳しい制限があります。

  • 配合上限濃度: フェノキシエタノールは、化粧品への配合上限濃度が1.0%以下と定められています。この濃度は、安全性が確認された上で設定されています。
  • ポジティブリスト制度: 日本を含む多くの国では、化粧品に配合できる成分をリストアップする「ポジティブリスト制度」を採用しています。フェノキシエタノールは、このリストに掲載されており、安全性が確認された成分として使用が認められています。

国際的な安全性評価機関の見解

国際的にも、フェノキシエタノールの安全性は広く認められています。

  • CIR (Cosmetic Ingredient Review) 専門家パネル: アメリカの化粧品業界が設立したCIRは、化粧品成分の安全性を科学的根拠に基づいて評価する、非常に権威のある独立機関です。CIRは、フェノキシエタノールについて広範な安全性データを評価しており、**「現在の化粧品の使用濃度であれば安全である」**という結論を出しています。皮膚刺激性、眼刺激性、皮膚感作性(アレルギー誘発性)など、多岐にわたる厳密な毒性試験データに基づき、安全性が確認されています。
  • EU (欧州連合) の化粧品規則 (EC) No 1223/2009: EUにおける化粧品の規制は世界で最も厳しいと言われています。EUの化粧品規則でも、フェノキシエタノールは、配合上限濃度1.0%以下で化粧品への配合が認められています。これは、EUの厳しい安全性評価基準をクリアしていることを意味します。

これらの国際的な評価機関による見解は、フェノキシエタノールが安全性の高い成分であることを強く示しています。

「刺激性」や「アレルギー」について

フェノキシエタノールは刺激がある」という声は、以下のような要因が考えられます。

  • 原液での刺激: 高濃度の原液であれば、確かに刺激性があります。しかし、化粧品に配合される濃度は1.0%以下と非常に低く、通常の製品使用において刺激を感じることは稀です。
  • 体質による個人差: どんな成分でも、ごく稀に個人の体質によってアレルギー反応や刺激を感じる可能性はゼロではありません。これは、アレルギーが一人ひとりの体の特性によるもので、特定の成分に反応してしまう方がいるのは事実です。例えば、卵や牛乳も、アレルギーを持つ人にとっては危険な食物になり得ますが、だからといって「卵や牛乳が危険な食品である」とは言いませんよね。それと同じことです。
  • 情報過多と誤解: 「フリー処方」を謳う製品が増えたことで、フェノキシエタノールが悪者であるかのようなイメージが先行してしまった側面もあります。

大切なのは、「配合濃度」と「個人差」を理解することです。 ほとんどの人は問題なく使用できますが、もし特定の製品で肌トラブルを感じた場合は、まず使用を中止し、皮膚科医に相談し、どの成分が原因かを特定してもらうことが大切です。

「フェノキシエタノールフリー」って本当に肌に優しいの?—隠れたリスクと誤解!

最近よく目にする「フェノキシエタノールフリー」という表示。これを見ると、「肌に優しい」「安全性が高い」と感じる方も多いかもしれません。しかし、ここにはいくつかの誤解が潜んでいます。

3.1. 「フリー処方」の裏側—代替成分の選択

フェノキシエタノールを使用しない場合、代わりに別の防腐剤や防腐効果を持つ成分を配合する必要があります。

  • 他の防腐剤を使用: パラベン、安息香酸、ソルビン酸など、他の種類の防腐剤が使われることがあります。これらの防腐剤もそれぞれ安全性は確認されていますが、フェノキシエタノールと同様に、体質によっては刺激を感じる可能性があります。
  • 防腐効果のある植物エキス・多価アルコール: 比較的刺激性が少ないとされる植物エキス(例:ユズ果実エキスなど)や、多価アルコール(例:ペンチレングリコール、BGなど)を多めに配合することで、防腐効果を高める処方もあります。しかし、これらの成分だけで完全に防腐できるわけではなく、場合によっては十分な防腐効果が得られず、製品が腐敗するリスクが高まる可能性もゼロではありません。また、多価アルコールが高濃度で配合されると、逆に肌の乾燥を感じる場合もあります。

「防腐剤フリー」は危険!—製品の品質と安全性の確保

「防腐剤フリー」と謳われる製品も存在しますが、厳密な意味での「防腐剤フリー」は、微生物汚染のリスクが高まるため、化粧品では非常に難しいのが実情です。

  • 代替手段: 防腐剤を全く使わない製品は、製造環境を徹底的にクリーンにし、特殊な容器(空気に触れないエアレス容器など)を採用したり、使用期限を極端に短くしたり、冷蔵保存を義務付けたりするなど、様々な工夫が凝らされています。しかし、それでも開封後の微生物汚染リスクは高まります。
  • 「フリー」表示のマーケティング戦略: 多くの場合、「○○フリー」という表示は、消費者の「特定の成分を避けたい」というニーズに応えるためのマーケティング戦略の一つです。必ずしも「フリー処方だから、その製品が万人に優しい」というわけではありません。

重要なのは、配合されている防腐剤の種類ではなく、その製品全体として「安全性が確認されているか」「肌に合うか」という点です。 「フリー」表示だけに惑わされず、製品のコンセプトや、自身の肌質に合うかどうかを総合的に判断することが大切です。

「フェノキシエタノール」はどんな製品に配合されている?—私たちの生活に欠かせない存在!

フェノキシエタノールは、その優れた防腐効果と安定性、比較的低い刺激性から、非常に幅広い種類の製品に配合されています。

  • スキンケア製品: 化粧水、乳液、美容液、クリーム、クレンジング、洗顔料など、ほとんどの基礎化粧品。
  • ヘアケア製品: シャンプー、コンディショナー、トリートメント、スタイリング剤など。
  • ボディケア製品: ボディソープ、ボディクリーム、ハンドクリームなど。
  • メイクアップ製品: ファンデーション、マスカラ、アイライナー、口紅など。
  • その他: ベビー用品(一部)、ウェットティッシュ、日焼け止め、医薬品(外用薬)、医療機器(コンタクトレンズ洗浄液など)にも使用されています。

このように、フェノキシエタノールは、私たちの日常生活に欠かせない様々な製品の安全性と品質を支えている、まさに「縁の下の力持ち」なのです。

化粧品選びの新しい常識!「フェノキシエタノール」と賢く付き合うには?

ここまで読んで、フェノキシエタノールに対するイメージが少し変わったでしょうか?では、この知識を活かして、より賢く化粧品を選ぶためのポイントをお伝えします。

「フリー」表示に惑わされない!本質を見極める

  • 防腐剤の「必要性」を理解する: 化粧品には防腐剤が不可欠であることを再認識しましょう。「防腐剤が入っているから悪い」という単純な考え方は捨てましょう。
  • 「フリー」の背景を考える: なぜその成分がフリーなのか、代わりに何が使われているのか、それが自分の肌に合うのか、といった視点を持つことが重要です。
  • 成分表全体を見る: 特定の成分だけに注目するのではなく、全成分表示を見て、製品全体のコンセプトや、自分の肌質に合う成分が配合されているかを総合的に判断しましょう。

自分の肌と対話する「パッチテスト」の重要性

  • 新しい製品を使う前には必ず: どんなに安全性が高いとされる成分でも、人によっては刺激を感じる可能性があります。新しい化粧品を使い始める際は、特に敏感肌の方は、腕の内側など目立たない部分に少量を塗布し、24〜48時間ほど様子を見る「パッチテスト」を行うことを強くお勧めします。
  • 肌の声を聴く: 「なんとなく肌に合わないな」「使うと肌が赤くなる」「かゆみが出る」といった肌のサインを見逃さず、すぐに使用を中止しましょう。

開封後の「使用期限」を守る!

防腐剤が配合されていても、開封後の使用期限は守ることが重要です。

  • 一般的な目安: ほとんどの化粧品には、開封後の使用期限が記載されています(例:M記号の容器アイコンに「6M」とあれば開封後6ヶ月)。記載がない場合でも、一般的に開封後は半年〜1年以内を目安に使い切るようにしましょう。
  • 保管方法: 直射日光の当たる場所や高温多湿の場所は避け、涼しく清潔な場所で保管しましょう。お風呂場に置きっぱなしにするのも、品質劣化の原因となることがあります。
  • 清潔に使う: スパチュラを使う、手で直接触れる回数を減らすなど、製品が微生物で汚染されないように清潔に使うことを心がけましょう。

まとめ:「フェノキシエタノール」は、あなたの肌と安全を守る「信頼できるパートナー」!

今回のブログでは、シャンプー・化粧品成分の専門家として、「フェノキシエタノール」の真実と、それがなぜ化粧品にとって重要なのかを徹底的に解説してきました。

フェノキシエタノールは、その幅広い抗菌スペクトル、安定性、そして国際的な安全性評価機関による承認によって、**化粧品の品質と安全性を保つために不可欠な「信頼できる防腐剤」**です。決して「悪者」ではなく、私たちの肌を微生物汚染から守る「影の立役者」なのです。

「フリー処方」の背景や、防腐剤の必要性を正しく理解し、自分の肌に合う製品を賢く選ぶことが、美肌への近道です。特定の成分への過度な不安ではなく、製品全体の安全性と自分の肌との相性を重視する「新しい常識」を身につけましょう。

この知識が、あなたの製品選びをより賢く、そして毎日の美容ケアをより安心で豊かなものにするための一助となれば幸いです。

さあ、あなたも「フェノキシエタノール」を正しく理解し、安全な化粧品で、健康的で美しい肌を手に入れてみませんか?

成分が含まれている製品一覧

hair recipe  (P&G プロクターアンドギャンブル)

ハニー アプリコット エンリッチ モイスチャー レシピ トリートメント

ハニー アプリコット エンリッチ モイスチャー レシピトリートメント 詰め替え 

マシェリ シャンプー(資生堂)

マシェリエアフィールシャンプーEX 450mL

マシェリ エアーフィールコンディショナーEX 450mL

マシェリ モイスチュアシャンプーEX 450mL

マシェリモイスチュアコンディショナーEX 450mL

ミノン シャンプー(第一三共ヘルスケア)

ミノン薬用コンディショナー 450mL

レメディ シャンプー(株式会社サンドラッグ)

レメディ シャンプー ポンプ 500mL

リマーユ(リバテープ製薬株式会社)

リマーユシャンプー 250mL

リマーユトリートメント 200g

リマーユヘアトリートメント 200g

サスティ 白髪染めシャンプー(株式会社ピュール)

 サスティ 白髪染めシャンプー 200mL

チャンプアップシャンプー(株式会社ソーシャルテック)

チャップアップシャンプー300mL

CA101 シャンプー(株式会社エル・ド・ボーテ)

CA101 薬用ブラックシャンプー260mL

守り髪(株式会社ティエラコスメティクス)

守り髪シャンプー 400mL

守り髪トリートメント 400mL

botanist シャンプー(株式会社I-ne(イーネ))

ボタニスト ボタニカルヘアミルク スムース80mL

ボタニスト ボタニカル ヘアミルク モイスト 80mL

ボタニスト ボタニカル ヘアウォーター 120mg

伊豆工房(株式会社カッパーゲート)

森かける香風 300g

ラックス シャンプー(ユニリーバ)

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LUX スーパーリッチシャイン ダメージ リペア コンディショナー 430g

TSUBAKI シャンプー(資生堂)

TSUBAKI しっとりまとまる シャンプー 450mL

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レヴール シャンプー(ジャパンゲートウェイ)

レヴール フレッシュール リペア ノンシリコンシャンプー 340mL

レヴール フレッシュールリペア トリートメント340mL

レヴール フレッシュール モイスト ノンシリコン シャンプー 340mL

レヴール フレッシュール モイスト トリートメント 340mL

レヴール フレッシュール スカルプ ノンシリコンシャンプー340mL

レヴール フレッシュール スカルプ ノンシリコントリートメント 340mL

ウーマシャンプー(株式会社ゼロプラス)

ウーマシャンプー プレミアム300mL

関連商品

参考資料

厚生労働省 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukoku/index.html

日本化粧品工業連合会https://www.jcia.org/

化粧品成分オンライン(Cosmetic-Info.jp)https://www.cosmetic-info.jp/

CIR (Cosmetic Ingredient Review) 専門家パネル: https://www.cir-safety.org/ 

EU (欧州連合) の化粧品規則 (EC) No 1223/2009: https://ec.europa.eu/growth/tools-databases/cosing/ 

独立行政法人 医薬品医療機器総合機構 (PMDA)https://www.pmda.go.jp/

皮膚科医、化粧品開発者による専門ブログや情報サイト:

「化粧品成分表示名称事典」(日本化粧品工業連合会 編)

「新化粧品学」(日本化粧品技術者会 編)

「香粧品科学」(日本化粧品技術者会 編)

「図解 化粧品成分事典」(かずのすけ 著)

「化粧品開発者の本音」(化粧品開発者が語る、化粧品づくりの裏側)

フェノキシエタノール(wiki)

フェノキシエタノールとは…成分効果と毒性を解説

フェノキシエタノールは化粧品の防腐剤。メリットと危険性!

フェノキシエタノール(資生堂)

フェノキシエタノール(cosmetic-info.jp)

安全!?危険!?フェノキシエタノール