はじめに:シャンプーに対する漠然とした不安を解消する

「シャンプーの成分は経皮吸収されて身体に悪い」「シリコンは毛穴を詰まらせるから危険」――インターネットやSNSを検索すると、シャンプーの成分に対する、このような不安や懸念の声が数多く見つかります。特に、「無添加」や「ノンシリコン」といった言葉が浸透するにつれ、シャンプーの成分に対する消費者の不安は一層高まっているようです。

しかし、これらの不安は、本当に科学的な根拠に基づいているのでしょうか?それとも、根強い誤解や古い情報によるものなのでしょうか?

本記事では、化粧品・シャンプー成分の専門家が、シャンプーが「身体に悪い」と言われるようになった背景にある主な誤解を一つ一つ解き明かし、その科学的な真実を公正に解説します。この情報を参考に、シャンプーに対する漠然とした不安を解消し、あなたが安心して日々のヘアケアを楽しめるための一助となれば幸いです。

なぜシャンプーは「身体に悪い」と言われるのか?主な4つの誤解

シャンプーに対する不安は、主に特定の成分に向けられています。ここでは、その代表的な成分と、それにまつわる誤解の真実を見ていきましょう。

硫酸系洗浄成分(SLS/SLES)=危険という誤解

ラウリル硫酸Na(SLS)」や「ラウレス硫酸Na(SLES)」といった、通称「硫酸系」と呼ばれる洗浄成分は、シャンプーの主成分として広く使われています。しかし、その強力な洗浄力から「危険な成分」というレッテルを貼られることが少なくありません。

  • 誤解の真実: 確かに、SLS/SLESは非常に高い洗浄力と脱脂力を持つため、肌や頭皮に必要な皮脂まで過剰に洗い流してしまうことがあり、乾燥や刺激の原因となることがあります。しかし、これが「発がん性」や「健康被害」に繋がるという科学的な根拠は、現在のところ見つかっていません。

  • 専門家の見解: 日本や欧米の安全評価機関は、化粧品に規定された濃度で配合されるSLS/SLESは安全であると結論づけています。問題は成分そのものの毒性ではなく、洗浄力の強さが、肌質によっては刺激になりうるという点です。

シリコーン=毛穴を詰まらせるという誤解

シリコーンは髪や頭皮に蓄積して、毛穴を詰まらせて薄毛になる」という説は、一時期、広く信じられていました。

  • 誤解の真実: シリコーンが毛穴を詰まらせたり、薄毛の原因になったりする科学的根拠は、現在のところ見つかっていません。

  • シリコーンの役割: シャンプーに配合されるシリコーンは、髪の表面に薄く、均一な膜を形成することで、髪の指通りを良くし、摩擦によるダメージを防ぎ、ツヤを与えるという、明確なメリットを持つ有益な成分です。

  • 洗い流しやすさ: シャンプーに配合されるシリコーンは非常に微粒子であり、適切な洗浄でほとんどが洗い流されます。

パラベンなどの防腐剤=アレルギー・発がん性という誤解

パラベン」や「フェノキシエタノール」といった防腐剤は、「アレルギー」「発がん性」という不安と結びつけられがちです。

  • 誤解の真実:

    • 厳格な規制: 日本で流通している化粧品は、使用できる防腐剤の種類、最大配合量が厳格に定められています。法律によって安全性が確認された成分のみが、規定された濃度で使われています。

    • 製品の安全性: 防腐剤は、製品が微生物によって腐敗するのを防ぎ、私たちの肌トラブルのリスクを軽減するための、非常に重要な成分です。

  • 専門家の見解: 防腐剤による肌への刺激やアレルギーは、その成分自体が持つ毒性ではなく、個人の感受性による問題です。どのような成分でもアレルギーは起こりうるため、防腐剤だけを特別視する必要はありません。

合成香料・着色料=刺激性という誤解

香料着色料も、「化学物質だから刺激性があるのでは?」と敬遠されがちです。

  • 誤解の真実: 化粧品に配合される香料や着色料は、法律によって承認され、安全性が確立された成分です。

  • 専門家の見解: 香料や着色料によるアレルギー反応は、防腐剤と同様に、ごく稀に個人の感受性によって起こることがあります。しかし、すべての人が刺激を感じるわけではありません。

専門家が考える「シャンプー選び」の真のポイント

シャンプーに対する不安は、特定の成分を「避ける」ことだけでは解決しません。本当に大切なのは、自分の頭皮や髪に合った製品を「選ぶ」ことです。

「洗浄力」と「マイルドさ」のバランスを見極める

シャンプーの洗浄力は、その主成分である「洗浄成分」によって決まります。

成分表示を正しく読み解く

  • 配合順位: 成分は配合量の多い順に記載されています。成分表の最初(水に次ぐ位置)にある成分が、そのシャンプーの主たる洗浄成分です。

  • ノンシリコン」の罠: ノンシリコンシャンプーだからといって、必ずしも洗浄力がマイルドなわけではありません。洗浄成分が強ければ、きしみや乾燥につながることがあります。

「防腐剤フリー」「無添加」の真実

  • 防腐効果は必須: 防腐剤フリー製品でも、製品の安全性を保つために、グリコール類や植物エキスといった**防腐効果を持つ成分(防腐補助剤)**が必ず含まれています。

  • 「安全」の保証ではない: 防腐剤フリーという言葉は「より安全」を保証するものではありません。製品全体の処方や、ご自身の肌に合うかどうかで判断することが大切です。

シャンプーの安全性を高めるための正しい使い方

どんなに優れたシャンプーでも、使い方を間違えれば肌や髪に負担をかけてしまいます。シャンプーの安全性を高めるための、正しい使い方を心がけましょう。

シャンプー前の予洗いを徹底する

  • 目的: ぬるま湯で髪と頭皮をしっかりとすすぎ、ホコリや汗、軽度の汚れを落とします。

  • 効果: 予洗いを徹底することで、シャンプーの使用量を減らし、頭皮への負担を軽減できます。

泡立ててから洗う

  • 目的: シャンプーを手のひらでよく泡立ててから髪に乗せ、泡で頭皮と髪を包むようにして洗う。

  • 効果: 泡がクッションとなり、指と頭皮の摩擦を減らし、髪や頭皮へのダメージを防ぎます。

すすぎをしっかり行う

  • 目的: 泡が残らないように、しっかりとすすぎを行う。

  • 効果: 洗浄成分やコンディショニング成分の残留が、頭皮の炎症やトラブルの原因になることがあります。

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まとめ:シャンプーは私たちの味方

本記事では、シャンプーが「身体に悪い」と言われる背景にある誤解と、その真実を徹底的に解説しました。

結論として、日本の法律で承認された成分で構成されたシャンプーは、適切に使用すれば安全です。大切なのは、特定の成分を「悪者」と決めつけるのではなく、その特性を正しく理解し、自分の肌質や髪質、そして目的に合ったシャンプーを賢く選ぶことです。

この知識が、あなたが日々のシャンプー選びにおいて、漠然とした不安を解消し、安心して美容製品を使うための一助となれば幸いです。

参考文献

日本化粧品工業連合会 (JCIA) – 化粧品成分表示名称リスト: https://www.jcia.org/user/display/contents/102 (各成分のINCI名確認に参照)

(書籍)かずのすけ 著『間違いだらけの化粧品選び』(成分の機能性や誤解に関する消費者向け解説に参照)

(論文)Cosmetic Ingredient Review (CIR) Expert Panel reports on various surfactants and preservatives. (各成分の安全性評価の根拠として参照)

(Webサイト)厚生労働省の医薬品医療機器等法に関する情報 (化粧品の安全性に関する法律の根拠として参照)

(Webサイト)日本皮膚科学会などの専門学会の公開情報 (皮膚生理学や洗浄に関する専門的見解を参照)